平成30年7月豪雨 7月16日(月)愛媛県大洲市での活動
活動者:酒井明子・窪田直美・作川真悟
1. 活動概要
大洲市内病院の理事長と面談し発災当時から現在までの状況や対応を聞き取り。二次救急病院の西予市の病院周辺を視察。宇和島ボランティアセンターで統括責任者から被災状況やボランティア状況の把握、ボランティアセンター内の救護班看護師2名から保健・医療活動内容の確認。大洲市ボランティアセンターにて統括から被災状況、ボランティア状況、活動内容、熱中症などの健康問題、応急仮設住宅の今後の見込みなどについて協議。宇和島の肱川水系周辺を源流に沿って視察。
2. 活動内容
時間 行動 内容
<9:55>≪大洲市内病院訪問≫
(大洲被害状況)
・ 死者:1名
・ 床上浸水:3000戸
・ 床下浸水:1600戸
(宇和島被害状況)
・ 死者:11人
・ 行方不明:なし
・ 床上:2602戸
・ 床下:808戸
・ 全壊・半壊115戸
・ 避難所:17箇所:77世帯175人
⇒新たな避難所7月14日開設
(下白井、大川内下)
肱川は支流が多く日本でも10位に入るくらい流域面積が大きいこと、山が迫っており河口が狭いこと、大洲地区と河口周辺の海抜差が10mもないことから、大雨が降ると河口の水が排出しにくい特性がある。愛媛県の被害が大きいのは大洲、西予市、宇和島である。西予市の病院でも診療は継続しているが、周辺被害が大きい。
病院は、ベッド数95床の地域の病院。隣接する介護施設は60床、その他60床、訪問・在宅200床を有しており、被災後は10床増床して福祉避難所として機能している。周辺病院では中核病院が二次救急対応を行っていた。普段から取引のある業者に病院の清掃、患者搬送を協力依頼。介護福祉関連のボランティアが30人参加あり。10日一般診療開始、11日手術室開始、13日エレベーター復旧、診療内容は主に外傷・熱中症・咽頭痛などであり、避難所からの傷病者もいた。6日の復旧活動後初めて15日16日と作業中止の指示があったことをきっかけに、被災にあった職員も自宅の片ずけ作業が始まったが、徐々に心身の疲弊の蓄積が見えてきている。水害は今回で4回経験しているが、平成23年の水害後は、診療部門や検査部門を2階以上に移設し、1階は受付部門のみとし、腰の高さ程度の壁を作り、空調の室外機も3mの高さに設置していた。今回は泥の入り方もひどく、浸水の高さも高かった(エレベーター天井から5cm下まで浸水)。これまでの水害の経験もあり、7日に洪水、8日9日と復旧作業、10日は患者さんに迷惑をかけないよう診療を開始した。過去の水害の度に対策を取っているが今回は大きな被害となった。エスカレーターも浸水して活用できないことから、診察のため患者搬送のボランティアを依頼していた。被災職員には休暇を優先している。
<11:10>≪西予市の病院周辺視察≫
病院が浸水しておらず、通常通り休日の二次救急対応をしていた。病院周辺の家屋の被害は大きく、泥も堆積していた。住民は洗浄作業や泥除けの作業をしていた。
(住民の語り)
家族や親戚が10人程家の片付けや清掃に手伝いに来ていた。
A氏は、被災による外傷があるが「大丈夫、大丈夫。いかんでいい」と受診せず。
A氏の妻:今までこんなことなかったからびっくりしたわ。道路から家までの坂を水が登ってきたのは初めて。気が付いたら坂の半分くらいまで水が来てて、もう逃げるとかはできないから、急いで2階に荷物をあげようとおもったけど、ほんとすぐに家まで水がきたからほとんど何にも2階にあげれんかった。2階まで水がこないか心配だったけど、一番高くてたぶん胸の高さくらい。水が引いて初めて家にきたときは、ショックというか声がでなかった。でもちょっとずつだけどみんなが手伝ってくれて綺麗になってきたから。
<11:40>≪宇和島ボランティアセンター訪問≫
ボランティアは400件のニーズに対して、300人が活動。1箇所10人を配置し、交替制で30分作業、20分休憩のルールを作っている。オリエンテーションはボランティアセンターで実施。これまで体調不良者は発生していない。社協職員の支援については17日からブロック支援が入る予定。資機材に関してはJC(青年会議所)の協力があり問題ない。救護スタッフは13日から活動開始。ボランティアセンターの立ち上げを一緒に活動。活動内容は午前中に事務作業やボランティアセンター内の衛生管理、健康管理、支援物資の整理など。本日は6箇所のボランティアセンターサテライトを巡回する予定とのこと。避難所巡回はまだ実施していない。この地域では、避難住民1世帯が一つの避難所に入る状況。現段階では避難住民のニーズについては、保健師と情報共有することを検討中。
<14:30>≪大洲ボランティアセンター訪問≫
16日にはボランティアが1,000人程度、15日には1,099人の参加があった。肱川の上流の被害地域にJCの協力を得て400名のボランティアが活動した。区長・消防団などからは、団体での支援の要望がある。ボランティアセンター周辺は平成23年の時にも浸水しなかったが今回は浸水した。社協職員も疲弊しており、熱中症で倒れた人もいる(本日も訪問中に救急車で運ばれる職員1名がいた)。運営スタッフの健康管理を行う医療支援はない。ニーズは、時間経過とともに変化が見られ、泥かきや重い家財道具の搬出などから、細かな洗浄や整理などに移行している。床下の泥かきも必要だが、なかなか床板を剥がすところまで行かない。建築方法が変わり日本家屋では床がはがせるが、新興住宅では床下に潜らないといけない状況。被災した社協職員も多い。今後仮設住宅は建てる方向だが、4,600の床上・床下浸水の被害に対して48戸と少ない現状。コミュニティを考慮しての仮設住宅の建設を要望しなければいけないと思う。子供のところに避難するなど人口の流出につながる。パイプ役としてつながりを作る必要がある。ボランティアセンターをいつまで続けるのかについては、今後ニーズ調査をして見極めながら収束時期を検討していく必要がある。被災住民の生活問題に関わりながら、普段の福祉活動につなげられるような活動が必要。明日からは徳島ブロックから社協スタッフ応援が来る。今も県の社協から応援があるがスタッフが足りない状況。
<15:10>≪被害の大きな肱川沿いの視察≫
川沿いの家は2階くらいまで洪水で浸水している家屋も見受けられ、ダムには多数の流木が流れ着いて水流をせきとめている状況のため、撤去作業を行っていた。
【課題】
・ ボランティアのニーズは増加しているにもかかわらず、昨日に比べボランティアの数は減少しており、ボランティア数の調整が必要である。
・ ボランティアセンターのニーズや支援状況が、医療・保健活動支援に活かされない現状から、医療・保健・福祉が協働できるような情報共有する場が必要である。
・ 高齢化により在宅医療が進む中、災害時にこそ現場で医療と保健と福祉がさらに連携していき、被災地域の自立を視野にいれた支援が必要。
・ 災害関連死を予防する観点からもコミュニティに十分配慮した仮設住宅の設置が望まれる。