JSDNニュース No.29
新理事長のあいさつ
理事長 山 本 あい子
会員の皆様、新しい年をお健やかに迎えられましたでしょうか?今年が穏やかな年となりますことを祈っています。日本災害看護学会誌16巻2号の巻頭言でも紙面を頂いていますが、ニュースレターでも一言ご挨拶をさせて頂きます。今期の理事会は15名の理事・監事で構成され、活動を行ってまいります。どうぞご支援の程、よろしくお願い致します。
現在、新理事会が発足して4カ月が過ぎようとしていますが、活動を始めて一か月の時期に、黒田裕子理事の訃報がもたらされました。いつも活発に動かれ、ご自分の意見もはっきりとおっしゃる元気な黒田先生が、私たちの知っている黒田先生でした。ですから、突然のご逝去に、ただただ驚くばかりでした。黒田先生は、本学会の発足時から会員として、また理事として、学会活動を積極的に支え推進してくださいました。災害が発生すると先遣隊として誰よりも早くその地に駆けつけ、被災された方々の支援活動を開始されました。東日本大震災の発生時にも、翌日には被災地に入っておられました。あの細い体のどこにそのような力と情熱が潜んでいるのかと、いつも不思議に思っていました。亡くなられてから日々が過ぎて行きますが、その存在感はむしろ大きくなり、今も私たちと共に居てくださっているように感じます。最後まで、日本災害看護学会の会員であることを望んで下さったことに感謝しています。会員の皆様と、黒田先生のご冥福をお祈りしたいと思います。
さて、日本災害看護学会は1998年に発足し、現在、個人会員1378名、組織会員48組織、賛助会員は6組織となっています。来年で17年を迎えますが、その間、年1回の学術集会の開催や学会誌の発行、世界災害看護学会の発足と運営、災害発生時の先遣隊の派遣・初動調査・初期調査等のネットワーク活動、学会時の交流集会やセミナーを通した教育活動、東日本大震災の被災地における支援活動、また災害発生時の募金活動、ホームページや1.17メッセージ等を含む広報活動、災害看護に関連した用語の明確化、そして組織会員数の増加やその活性化などなど、多くの事業を行ってきています。
今期の理事会では、楽しく学びあうをモットーに、1)前述した従来行ってきた実践活動を大切にしつつ継続しながら、2)災害看護学の知の構築に向けて、実践から得られた成果を集約し、知識として組み立てること、ならびに災害看護の研究を進めること、また3)災害に強い看護職作りとして、看護基礎教育における災害看護教育を支援することと、災害看護の専門家の育成を促進することを行っていこうと思っています。さらに体制の強化に向けて、4)災害時の支援ネットワークシステムの強化と、5)災害看護の国際ネットワークをより活性化すること、また6)本学会の会員増に向けた取り組みを進めること、そして7)災害看護からの施策提言を行っていきます。会員の皆様のご参加とご支援をお願いし、共に支え合い、学び合い、高め合いながら、災害看護の発展に努めていきたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します。
◆ 新理事の担当する各委員会抱負 ◆
編 集
前期から引き継いだ課題として、学会誌の電子化が挙げられます。準備は着々と進んでおり、今年度の終わり頃には会員の皆さんにお知らせできると思います。また、会員の皆さんへのお願いでもありますが、本学会誌の継続課題として、原著論文を増やすことがあります。会員の皆様にも学術団体としての役割の一部をお願いしたいと存じます。
理事 山 田 覚
国際交流
国際交流委員会は、今期から世界災害看護学会の支援業務を担うことになりました。来年3月中旬に仙台で開催される国連防災会議には、パブリックフォーラムにおいて世界災害看護学会、国際看護師協会(ICN)の共催の企画を行うことになってその世話役を務めています。本学会の活動も世界に発信する計画です。
理事 南 裕 子
ネットワーク
ネットワーク委員会・調査調整部会は、これまでの調査活動実績を基盤として、より効果・効率的な調査のあり方を検討していく予定です。また、調査活動に関わる倫理指針の策定や調査活動時の安全管理や保障についての整備等を行い、ネットワーク委員会・調査調整部会のさらなる発展に向けた活動を展開していきます。
理事 石 井 美恵子
教 育
この度、前年度の山本理事から引き継ぎ災害看護教育活動委員会の理事を担当させて頂きます。前回、同じ要職で2期活動させて頂いています。課題とする災害看護の基礎教育、継続教育特にリーダー育成、CNS教育、また避難所や自宅避難における要援護者への対応について、メンバーと共に取り組む所存でおります。
理事 小 原 真理子
組 織
組織会員会委員会は2006年度より会則に位置付けられ、組織会員間の情報共有および相互啓発を推進することを目的に活動しております。発足後10年の間様々な活動が行われ実績をあげております。今後も「組織会員のありかた」と「組織会員増」に皆様方のご支援を頂きながら活動してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
理事 長 田 恵 子
用語検討プロジェクト
災害看護に必要な用語を共通理解できるように学会として用語を検討し広く皆様と共有したいと考えています。昨年度Webを使った会員と共に用語検討できるシステムを提案されました。今期はこの方法を用い、災害看護で活躍する会員の皆様にWebを通してご案内いたします。また、1998年に本会が定義した「災害看護」について、再検討します。皆様のご協力を心からお願い申し上げます。
理事 片 田 範 子
法人化プロジェクト
本学会は、一般社団法人格を平成28年7月に取得することが総会で承認されました。法人化により、学術団体として社会的役割を従来以上に果たすことが可能となります。現在、法人化に向け、今まで創りあげてきた学会の特徴が反映できるよう定款等の作成に取り組んでいます。定款案等は、随時会員の皆様にお示ししていく予定です。その折には、ぜひご覧頂き、ご意見をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
理事 森 下 安 子
社会貢献広報
1.ニューズレター・当学会ホームページ掲載送信
各委員会の活動や災害関係のニュースなど、会員の皆様に向けて新しい情報を分かりやすく提供して行きます。
2.継続的な社会貢献の実施
学会開催期間内には、一般市民向けの防災を学会員と共に学べるような活動を目指します。
委員一同(6名)を宜しくお願い致します。
理事 山 﨑 達 枝
日本災害看護学会
第16回年次大会の報告
筧 淳 夫(年次大会会長)
2014年8月19日、20日の両日にわたり、東京の新宿駅西口にある京王プラザホテルと工学院大学新宿校舎の2つの会場において、日本災害看護学会第16回年次大会を開催いたしました。参加登録者数は1,300人となり、口演と示説をあわせて87題に及んだ学会発表以外にも、特別講演:2題、教育講演:5題、シンポジウム:4セッション、パネルディスカッション:3セッション、学会企画:6セッション、公募ワークショップ:6セッション、公募交流集会:4セッションと数多くの企画プログラムに多数の方々がご参加下さいました。特に公募したワークショップと交流集会は合計10セッションに及び数多くの会員の方々が学会企画に積極的に関わってくださったことはうれしい限りです。
特別講演においては、畑村洋太郎先生(東京大学名誉教授)が「東日本大震災が教える者~失敗学からの提言~」と題して、事故や災害を考える上でのキーワードや、東日本大震災における津波や原発事故を通して今後に生かす指針をご講演下さいました。特に講演の骨子として示された8つのキーワードは、事故・災害に限らず広い意味での今の日本の現状を指し示すものとして大きな学びとなりました。もう一つの特別講演では上野淳先生(首都大学東京名誉教授)が「東日本大震災と避難所となった学校」とのタイトルで、避難所としての学校の課題を指摘されました。上野先生はこれまで学校建築の研究を積み重ねてきた経験を元に、東日本大震災以降、現在でも継続的に被災地を訪れ、災害時に学校が抱える問題点を整理していらっしゃいます。そうした中で発災直後から学校機能再開までのプロセスを整理し、その時々に必要な要件を取りまとめており、それらは医療施設の災害対策にも通じるものでした。
これらの企画以外にも、延べ50名近くの講師が様々な講演を行って下さいました。中にはこれまで災害看護学会では取り上げることのなかった建築の構造に関する話題など、少し傾向の異なる多岐にわたったプログラムもありました。これらが参加者の方々にどのように受け止められたかいくぶん心配でもありますが、大会会長の専門分野の一環としてお許し下さい。
最後に本企画を実施するにあたって、ご協力いただいた様々な方々に改めてお礼を述べて、年次大会の報告とさせていただきます。
ネットワーク活動報告
平成26年8月20日未明からの大雨による
広島土砂災害における初動調査報告
立 垣 祐 子(明石市社会福祉協議会)
渡 邊 智 恵(日本赤十字広島看護大学)
我々、ネットワーク活動調査・調整部では、災害看護の知識構築の一助となるべく、国内の災害時の看護活動のニーズについて、独自の調査基準に準じた調査・情報収集活動を行っています。
今回、私たちは、大規模土砂災害から約2か月経過した、平成26年10月14日に広島県に赴き、現地の被害状況や看護活動について初動調査を行いました。「初動調査」とは、ネットワーク活動調査・調整部メンバーが被災地へ直接赴き、聞き取り調査や現地視察を行う調査方法です。実際に土砂災害があった場所へ立ち入ることはできませんでしたが、遠目にも緑の山に茶色の鋭い亀裂がいくつも走っており、凄まじい光景でした(写真)。
調査にご協力いただいたのは、大規模な土砂災害が発生した場所からほど近い市内の医療機関に勤務し、発災直後から負傷者の受け入れをされていた救急認定看護師、看護管理者、避難所で活動された災害支援ナース、そして県行政の方々です。
救急認定看護師の方は、施設が浸水するという被害に遭いながらも、災害対策チームを立ち上げ受け入れ準備を整えたとのことでした。またこの土砂災害に遭う直前に土砂災害に対するシミュレーショントレーニングを行っていたことが、実際の支援活動に役立ったと語ってくださいました。
災害支援ナースの方からは、避難所でのケアを行いつつ、豪雨が続くことによるさらなる二次被害の可能性を想定していたこと、そして土砂災害時における破傷風の予防対策の検討の必要性等を語っていただきました。今回の土砂災害では、豪雨が連続して起こったことが被害の拡大につながったと指摘されています。いつ起きるかも知れない二次災害の不安を目の当たりにしながらの支援を冷静に組み立てておられました。
本調査のなかで注目すべき点は、支援にあたった看護者の方々が、精力的に支援を行いながらも、起こりうるリスクを精密に分析されていたということです。調査では「今後、考えておられる活動等はありますか?」という私たちの問いに、『支援の体験が新しいうちに、災害教育を行っていきたい』と答えられました。被災体験を被災体験で終わらせない看護者の強い意志を感じました。災害からの復興途中というご多忙の折、ご協力いただきました皆様に感謝申し上げるとともに、被災地の復興を衷心より祈念しております。
編集後記
今期第1号のニューズレター発刊の運びとなりました。今回は、新理事の皆様の抱負、第16回年次大会報告、広島土砂災害の報告記事を掲載させていただきました。
阪神・淡路大震災から20年、東日本大震災は4年が経過する今年ですが、新年早々海外では、宗教対立からテロそしてサイバー戦争を彷彿させるような出来事が起こっており世界を不安定にしています。私たち学会員は災害後の復興の中での看護、新たな災害への看護と今年も各々忙しいかもしれませんが、順調で健康で平和な一年となることを祈るばかりです。(神崎初美)