「これまでの10年と今後に向けて」

NPO法人阪神高齢者・障害者支援ネットワーク 理事長 黒田裕子

阪神・淡路大震災から11年目を迎えた。大都市で起きた直下型大地震は未曾有の被害をもたらしただけでなく、医療、福祉、地域社会、暮らしのあり方も大きく変革させることになった。  その理由に6433名の震災犠牲者の半数以上が高齢者であり、また、生き残った被災者の多くも高齢者という、世界でも初めての「高齢者型災害」であったからだ。

「高齢者型災害」はコミュニティが弱体化するなかで、住民の生活支援、住民相互が支えあうコミュニティづくり、他職種・行政・住民との連携および「協働と参画」を重要視して看護者の役割を展開した。展開した実践とそこからみえてきた課題を述べることとする。

分野の壁を越えたネットワーク

「いのち」を原点として「暮らしと地域の一体化」を掲げ、おのおののフィールドで市民主体の社会の形成をめざし取り組んできた。この取り組みの理念は「一人の人としての『いのち』を重んじる」ことであった。震災後に遭遇した数多くの「孤独死」や「自殺」などは、忘れることができず、看護師の役割を問われたことでもあった。

そこで、われわれが呼びかけ人となり、「子どものケア」「高齢者の見守り」「仕事づくり」「人づくり」などをテーマとし、地縁組織、行政(保健所、福祉課、まちづくり推進課等)、消防署、警察署、企業などの連携をはかったことで、問題解決に向けて役立つことができた。

多テーマ型および多世代型の複合型コミュニティづくり

コミュニティの構成は「何でもありき」の多世代型で、そこに暮らす人々は、多様な趣味や得意技や専門性を持っている「複合型コミュニティ」である。複合的で多様な資源が錦織のように重なったコミュニティづくりと、さらに知縁と地縁が連携できるよう、看護者がコーディネーターとなり、問題解決に向けて役立つことができた。

今後の課題

10年の活動を通して、「地域社会のあり方」「看護の再構築の重要性」「社会資源および福祉資源の有効な活用のあり方」などなど、多岐にわたる課題が浮上した。課題の解決には、「ひと」と「暮らし」を中心にすえて、政治的課題や社会システムの改善、地域社会を視野に入れた積極的な看護の姿勢が必要であり、また、社会も看護者に望んでいるとことである。

コミュニティづくりは平常時の備えであり、災害時の減災であることを心しておきたい。

 





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会員数:2024年6月30日現在

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