「災害時に支援する側の備え,支援を受け入れる側の備え」

兵庫県立大学看護学部看護学科 髙田洋介

 

2008年5月に中国四川省で発生した地震災害に対して,日本は中国の派遣要請に応え,いち早く国際緊急援助隊(Japan Disaster Relief,以後JDR)医療チームを派遣した。これまでのJDR医療チームの活動経験は野外での医療活動が主であったが,今回,初めて4,300床規模の大学病院で支援活動を行うこととなった。日本チームのスタッフは,ICUや救急外来,透析室などに配置された。私は被災患者を対象とした胸部外科ICUに配置された。実際の活動としては,高度先進医療の知識と技術を活用した,人工呼吸器装着中の患者の呼吸管理,体位管理,創傷管理などを担当した。その際,中国人スタッフは,薬剤投与やカルテへの記載を行うなど役割分担し協力して業務を遂行した。結果,日本チームの活動により中国人スタッフの仕事の負担を軽減することができたと考える。

その他にも今回の活動を通して気づいたことを災害看護の視点で述べてみたい。これまでJDR医療チームは野外での外来診療が中心であったため,対象の多くは軽症患者であった。しかし,今回の病院支援の経験を通して,支援する側には重症患者に対応できる専門的知識と技術も確実に備えておくことが重要であることを認識した。さらに,被災国のスタッフと協同して医療活動を行うためには,支援のためのニーズアセスメントやコンサルテーション,成人教育の知識・技術も大切であること改めて再確認することができた。

四川省には旧日本軍による爆撃の歴史があったが,中国人スタッフはマイナスな感情を感じさせることなく,むしろ突然やって来た日本人を快く受け入れ,スムーズに活動できるよう配慮してくれた。しかし,立場が逆であった場合,我々は突然来た部外者,特に外国人スタッフと協同して効率よく医療活動が行うことができるだろうか。近年,日本国内でも大規模な災害が発生し,国内においてもDMAT(Disaster Medical Assistance Teams)やボランティア看護師が病院内で支援活動を行う機会が多くなってきた。はたして,その支援は,どのような結果をもたらす事が出来ているのだろうか。良い面も課題もあわせて検証していくことも大切であると思う。

我々は自分の国が,自分の勤務する病院が,看護部が,支援を受ける立場になる日が来た時に,果たしてその支援を受け入れる「備え」はあるだろうか。是非,受け入れる立場で「備え」をしておきたいものである。

 





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