医療従事者の感染防護具着用が
人に与える印象と事前情報との関連性

三橋 睦子1) 大坪 靖直2)

1)久留米大学医学部看護学科 2)福岡教育大学

要 旨

感染制御のあり方について検討するための基礎的調査として、医療従事者の感染防護具着用が人の印象に与える影響と事前情報との関連性について実験的手法により調査した。事前にYG性格検査の自記式調査を行い、前後で感染症のリスクイメージ、対人認知尺度の質問紙調査を行った。白衣姿の医療従者3人から10m離れた地点より、接近法にてパーソナルスペース(距離・脈拍・瞬き回数)を測定した。その後、3つの情報①SARSについて②SARSと感染防御について③マザーテレサ(統制群)についてのいずれか1つのDVDを視聴してもらい、再度感染防護具着用のSARSスタッフに対するパーソナルスペースを計測した。対象は教育系学部大学生の83名である。
感染防護具の着用により、SARSリスクの恐ろしさイメージは低下し、未知性イメージは上昇した。医師の活動性イメージが低下し、逆に看護師の社会的望ましさイメージの上昇を認めた。限界点における白衣時の対人距離は133.7㎝で、感染防護具装着後の調整平均値は、統制群が158.70±17.02(±SE)㎝、感染防御群217.07±17.94㎝、SARS群204.48±16.83㎝と有意に拡大した(p<0.001)。ケア環境における対人距離としては不適切な広がりを認め、同時に瞬き回数の低下を認め、防護具が未知であるゆえの反応と推測された。さらに、情報(DVD)の条件間にも差を認め、統制群に比べて感染防御群のほうが有意に距離が拡大した(p<.05)。専門的な情報提供が逆に感染症に対する脅威を与える可能性が推測された。

●連絡先:E-mail mihashi6@med.hurume-u.ac.jp

Vol.9, No.2, Dec 2007

 






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