岩手県宮古市の避難所における活動報告

社会福祉法人聖隷福祉事業団 総合病院聖隷浜松病院 林 美恵子

2011年3月11日は,私たちの病院がある静岡県浜松市も大きく揺れました。安全確認を行いつつ災害対策本部に出向いたところ、そこで見たテレビには大津波が襲来する様子などが映し出され、驚 くべきものでした。これはきっと災害支援要請が来るに違いないと確信すると同時に、阪神・淡路大震災の折の、神戸市長田区番町診療所での活動が思い起こされました。
私たちが被災地に赴くようになったのは,震災発生からすでに2カ月がたとうとしていた5月初旬でした。出動依頼の内容は,岩手県宮古市の避難所での活動でした。今、避難所ではどのようなこ とが求められるのだろうか― いずれにしても、急性期、慢性期を問わず病院とは異なる特徴の医療・看護を提供することであり、臨機応変さが求められることには違いないと考え、準備を整えて被災地に向かいました。チーム編成は外科、内科系の医師、看護師2名、薬剤師、事務の6名です。
宮古市に到着すると、復旧には程遠い状況にあると強く感じたことを鮮明に記憶しています。そして、避難所ではまだ多くの方が不自由な生活を強いられていました。小学校に設置された仮設診療所に到着して早々に引き継ぎを行い、医療・看護活動を実践する中では、感冒や慢性疾患を呈する人、外傷後の創傷ケアなどを要する人が多く、まだまだ医療の手は必要であると痛感しました。 さらに避難所内を回って、話を聴いたり、血圧測定を行ったりと、保健・医療・看護を提供しまし た。
医薬品などの物資も随分と整っているとはいえ限りがある中、けがをしている人などに対して、 身の回りにある物で長期的にどのように対応していくかについてチームで話し合い、例えば,創傷に対しては食品用ラップフィルムを用いて保護するラップ療法を行うことなどを避難所の人々に説明しました。また、精神的にも疲労が色濃く見えている人が少なくなく,同時期に活動していた心のケア班とも連携を取り、不眠時の対応などを相談して行いました。被災地の人の訴えを聴くことができる存在である看護師は、チームの要でもあることはいうまでもありません。
仮設住宅が徐々に建設されている今も,避難所においてはまだまだ医療の手が必要であることを 痛感しており、チーム医療活動が継続されるシステムの重要性を再認識しています。

(Emergency Care 2012 vol.25 no.2 掲載)

 





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