災害看護メッセージ―備え―

井赤十字病院 看護部  野路真由美

 

自然災害・人災等「まさか」「信じられない」災害が、国内外の身近な場所で起こっている。普段いくら気をつけていても、病気や災害は突然の悪夢として襲ってくる。自然の力は計り知れず、人間の「恵み」ともなれば「脅威」ともなる。「備えあれば憂いなし」とよく言われるが、人は自分の身近に事が起こらないと、なかなか「備え」ができない。  2004年夏福井豪雨に見舞われ地域の救護に参加した折、被災された方の厳しい状況を目の当たりにした。被災者の方は当初身の安全を第一に考えるが、その直後被害の大きさや復興の目途が立たないことに呆然とされる。土砂で家の中が埋まってしまい、家具を出して床下から泥を出す作業は、想像を超える重労働である。若者も高齢者も毎日の作業でクタクタに疲れているが、投げ出すわけにもいかない。地域やボランティアの方が応援に来て下さると、余計に自分は休んではいられないと作業の手を止めない。  こんな非常事態の時には、治療を継続している方はもちろん持病のない方でも、体力や免疫力が低下して体調を崩し、精神面でも大きなストレスを受ける。常備薬を継続して服用し、できるだけ早期にかかりつけ医を受診して体調を管理する必要がある。  現代人は動物的な勘や行動力を失いつつあると言われているが、知性・想像力を持っている。突然の災害が起こった時、最悪の状況を考えて判断し迅速に行動するためには、日頃の訓練と心の準備が必要である。医療者としてだけでなく地域住民として、災害から大事なものを守る為に考えられる「備え」についてあげる。  1. 人は守る者(物)があると強くなれる。日頃から大事なもの、大切な人・家族との絆を育てて、お互いを大事にする。  2. 人はシュミレーション・訓練により、選択的な判断・行動を身につけることができる。仕事でも訓練が大事なように、生活の場・家庭でも災害時のシュミレーションが、被害やストレスを最小にする為には有効である。  3. 物資の準備は最低限個人が準備し、食事・飲料水・懐中電灯・備品の中に、常備薬・救急薬品を忘れずに入れる。  4. 心の準備として、苦境に強く想像力を働かせる、生きることへの執念・喜びをたくさん持つなどの、精神面を鍛えることが日頃から重要である。  災害に見舞われてから後悔しないよう、最小限の自分の「備え」を日頃できることからしていきたい。

 





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