災害看護メッセージ―備え―
土石流災害時における看護部の取り組み

市立岡谷病院看護部

名取茂美(看護部長)

赤羽久美、川村直子 (看護師長)

 平成18年7月19日午前4時30分頃、市制始まって以来、かつてない土石流災害が岡谷市に発生した。7月15日から19日まで降り続いた雨は総雨量400ミリを超え、19日未明、市内各所で土砂災害、河川の決壊、道路陥没等が発生した。なかでも、湊・川岸・上の原地区では大規模な土石流が発生し、被災状況は死者8名、負傷者14名、家屋崩壊は全壊、半壊を含め72棟、床上・床下浸水257棟であった。  病院には、午前5時35分に災害発生の「連絡」があり、直ちに全職員に招集がかけられた。しかし、道路はいたるところで寸断されており、職員の参集もままならない状況であった。このような状況から30日までの間の災害発生に対する看護部の取り組みを振り返りたいと思う。  7月19日、午前6時15分、当院に災害対策本部が設置され、院長、看護部長、事務責任者を中心とした会議が開かれ、方針が提示された。当日の外来診療は中止となり、直ちに被災者の受け入れ準備が始まった。看護部は来院者の対応と外来予約患者200名への「変更」の連絡を行った。また、各病棟に被災者受け入れのベッドを確保し、正面ロビーには仮設診察室が設置され、他部門と協力し、救急薬品や物品の準備を整えて、被災者の受け入れが出来るようにした。また医師1名、看護師1名、事務員1名で3名のチームを編成し、市内10ヶ所の避難所を巡回した。巡回は災害当日の19日から30日まで24時間体制で実施された。  看護部では、被災者個々への「継続された看護」と「メンタルケア」が実践できるよう、各部署の師長が勤務表を持ち寄り、チーム編成や、参加メンバー、巡回場所などの毎日の人的パワー・計画を立てた。また避難所毎の連絡ノートを作成し、活用した。被災者の訴えや症状を細かく記録し、20時の巡回後のミーティングで毎日、報告され、チーム間で情報を共有することが出来た。  被災者からは、「自分のことを良くわかっていてくれるので安心です。」という声も聞かれた。また巡回を待っている被災者も多く、今後の生活への不安を泣きながら訴える被災者もいた。 私たちは災害時の避難所の巡回・ケアが、いかに重要であるかを知ることが出来た。また途中からは巡回チームに医師会の医師も加わり、地域のなかでのチームワークも確立が出来た。  在宅で介護を受けていた高齢者には、積極的にケアマネージャーやケースワーカーが介入し、近隣の福祉施設等に入所できるように手配された。  このたびの災害看護実践を通して、被災者や地域住民から思いやりや感謝の気持ち、部門を越えたチームワークの大切さ等、日常の看護では経験できないことを学んだ。そのなかでも、特に「学び」となったことは、 ・ 指示命令系統を明確にした災害時の体制 ・ 非常事態対応の人事、グループ作り ・ 普段のトレーニングの重要性 ・ 地域との連携やネットワーク作り などがいかに重要であることかを認識することが出来た。これらの貴重な体験は、私たちの今後の看護にも大きく影響することであると思う。  災害は二度と発生してほしくないが、災害がいつ、起こっても対応できるように体制を整えておくことが重要である。

 





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