災害看護メッセージ―備え―
福井豪雨(2004年7月18・19日)を被災者として経験し考えたこと

福井大学医学部附属病院  宮前まゆみ

 今年の7月も活発な梅雨前線による九州から東日本の広域に亘る豪雨がありました。福井県も局地的な強い雨が降り、私の地域では2004年の福井豪雨で浸水した住宅がまたもや浸水し、「避難勧告」も出され、道路も冠水の為、通行止めになりました。

「あ~まただ」と私の気持ちは2年前のような「大災害」になるのではないかという不安と恐怖でいっぱいになりました。  2004年7月18日の勤務は夜勤の予定でした。朝から雨がひどく7時頃から8時頃にはもう水位がどんどん上がって来る様子が実感としてわかりました。テレビの気象情報などを見ながら状況を把握しました。昼頃には雨が更にひどく悪くなり、とうてい、勤務に出向くことはできない状況であると判断し、病院に連絡し休みをいただきました。それからは時間とともに状況は悪くなる一方でした。ただ、テレビの気象状況を見ているだけで「まだいいだろう」と言う気持ちと、「もう逃げないと」という気持ちとがありました。しかし、家族はいっこうに動く気配を見せませんでした。近隣地域の方からの連絡も全くありませんでした。遠くでサイレンや災害放送が鳴っているのは聞こえましたが、なにを言っているのかわからない状況でした。勿論、避難勧告は出ていましたが「まだまだ大丈夫だろう」と思っているうちにもう、家からは出られないほどの事態になっているとは思ってもみなかったことです。床上まで汚い泥水が流れ、ドラム缶が流れ、足羽川の決壊の午後4時過ぎまでには、泥水はどんどん家の中に入り込みました。そこで、1階の荷物を2階に上げるなど、汗をぬぐいながらの作業が続きました。一瞬のうちの無残な状況の家、車庫、田畑に今考えると、「自然災害とはこういうことなんだ」と思いました。  体験を振り返ってみると、いつ起こってもおかしくない自然災害に備えて、私達は日頃から準備をしているか、ということが問われます。そして、「まさか」ということも考えておかなければならないということです。自然災害が発生し、避難行動をするまでに、情報伝達はどのようになっているのか、最新の情報は得られたか、居住地域の防災力はどうなっているか、何を最優先したらいいのかなどを考え、判断することが大切であると思いました。そして、家族の協力は勿論、必要ですが、洪水が迫ってくる恐怖のなか、連絡し合い、ともに冷静に考え、支えあう、近隣住民の助け合いと地域防災力が一番、重要です。

今後は近隣地域住民との連絡態勢の実践的な訓練や、最新情報の配信や被災地域に無線連絡の徹底などが図れるシステムを要望すると同時に、個人個人の災害に対しての「準備」と防災に対する「意識」を高めることの重要性を、経験から強く訴えるものです。

 





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