済生会熊本病院 古木アケミ
私は災害拠点病院、地域支援病院に指定されている病院に勤務し、かつ,災害看護委員の役割を担っている。県看護協会の災害支援ナースとして登録もしており、平成19年7月の台風で被災した美里町へ災害看護支援の機会を頂いた。 派遣された避難所は中学校体育館と武道場で、被災4日目には84名が避難していた。地域の保健師から「高血圧者が多く、慣れない生活で血圧が上昇傾向」という情報を得た。そこで私は夏場の脱水や不眠による疲労も考え、「気分が悪いとか、血圧が気になる方はおられませんか」と声をかけながら、多くの人の情報収集に努めた。また、水分補給や簡単な体操の必要性を伝え、希望者には血圧や体温の測定を行うなどの活動を行った。 深夜の役割として、私は武道場の28名を担当した。そのなかには,呼吸補助器装着中の男性と避難中に脇腹を打撲した90歳代の女性が休まれていたので、起きられた時には駆け寄ってトイレに付き添うなど避難所における日常生活の援助を実践した。この夜(4日目)に初めて布団が支給され、避難中の人々は少し安心,少し安楽に休まれている印象を受けた。避難中の人のなかには家屋が全壊した人や、家族の一部は親戚に身を寄せ,離ればなれの生活を余儀なくされている、避難所から通勤しているなどさまざまな事情を抱えていた。また避難所は高齢者や子供、男性,女性が一緒の集団生活でプライバシーの確保ができにくく、このような不自由な生活がいつまで続くかといった不安も伺え、心理的なケアの必要性を強く感じた。 翌朝には担当保健師へ申し送りを行い、私の災害支援看護活動は無事に終了することができた。 活動後の感想としては,災害看護研修と救急外来の勤務経験などから災害時には看護師として「何かの役に立ちたい」と思っていたところ,このたび,実際に参加することができた。しかし,病院の夜勤とは異なり,看護師として,その場で,一人で判断し,対応をおこなわなければならない「責任」があった。看護の実践にあたり着任と同時に,場所や物の確認などを自ら行う必要性があったことも反省させられた。このたびの経験をもとに、災害看護対策委員としても災害時の看護師の役割の重要性を伝え、教育訓練の企画に活かしていきたいと思う。
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