阪神高齢者・障害者支援ネットワーク理事長 黒田裕子
台風14号が平成19年7月6日熊本県美里町を襲った。 その時、日本災害看護学会ネットワーク活動の月当番であった黒田は、熊本県看護協会へ現状調査のため電話をした。状況によっては応援に行くつもりであったが、電話した時点では、応援は不要とのことであった。 7月9日に熊本県看護協会は、美里町役場に連絡を取られ、「砥用中学校に避難していた被災者約120名を対象に活動している美里町と宇城保健所の保健師、近隣の医療機関看護師が24時間体制で健康管理を行っており、とりわけ保健師に疲労が見られる」との情報を得た。 それらの情報は活かされて,美里町長より熊本県看護協会に「災害支援ナースの要請」があり、「7月10日~17日までの8日間に延べ9施設12名の看護職が避難所の救護所で夜間のみの支援ナースとして活動した」と熊本県看護協会より報告を受けた。 筆者は福井豪雨及び水害などにおいての支援経験があり、そのときのことを思い,すぐに電話を手にした。多くの被害が出ている中で、何かできることがあるのではとの思いが強かったからである。 これまでの経験の中で、自然災害によっての被害は「くらし」を奪い、時には「いのち」までも奪うことがある。その恐ろしい状況を思い浮かべ、電話=応援だけではなく、現地へ赴いての支援を何か出来ないかということが脳裏をよぎった。しかし,今,できることとしては「支援ナースの重要性と支援要請」などの具体的な方法の情報を熊本県看護協会に提供させていただいた。 熊本県看護協会は、常に災害看護について広域的に研修会を開催されている。そのことが活かされてこの度の行動「災害支援ナースの派遣」が実践できたことに感動した。「ひとりの人としてのいのちを救う」ことを前提に行動されたことで、多くの看護師たちも得るものが大きかったことと思う。 このことを更に活かし、日常のなかで考慮することの重要性も学ばれたことであろう。災害の現場で活動させていただくことでいつも思うことは、「看護の原点」を更に考えさせられると共に進化させられることである。さらに,「災害は他人事ではない」と、現場に行くたびに学ばされることが多い。 筆者がいつも災害と向きあう時、大切にしている原点とは、 1. 時間軸によって看護ケアの変革 2. 発達段階的によって看護ケアの変革 3. 四季によって看護ケアの変革 4. 地域の特性によって看護ケアの変革 5. 支援者によって看護の変革 等などである。 また「人間」と「地域」と「くらし」が一体化する中で、支援のあり方を考慮することも欠かせないと考える。 一つ一つの行動に意味づけをしながら、ケアのあり方を考慮すべきであることを強化したい。いつ,どこで,どのような状況で襲ってくるか分からない災害は、日頃から備えを十分にしておくことの重要性を実感している。また、地域で暮らす我々にとっては、地域を無視しないでもっと地域の中に入り、そして日頃から地域を熟知しておくことが大切であることも痛切に感じている。 これからの支援活動は、ますます大変な状況下に置かれることになるであろう。なぜなら独居高齢者の増加があり、老老介護も多い現状があるからである。 看護の世界においても授業の中に「災害看護」が設けられることになった。今後はさらに真剣に、そして前向きに取り組み、必須科目として位置づけていくために幅広く,深めさせたいのである。
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阪神高齢者・障害者支援ネットワーク理事長 黒田裕子
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