本事業は、2009 新型インフルエンザ(A /H1N1)の世界的大流行に伴い、その対応の在り方について、日本災害看護学会として今回の総括を行い、第二波への備えに対して提言をしていくことを目的とし、2009 年8 月に結成(発足)されました。2009 インフルエンザ(A /H1N1)は、4 月24 日にメキシコ・アメリカで局地的に発生が確認され、感染者はいずれも20 歳以下の青少年でした。その後のWHOの動きは周知の通りで、4 月27 日に警戒水準をフェーズ3 から4 へ引き上げ、さらに4 月29 日にはフェーズ5 への引き上げを決定、その後も世界中で感染が拡大し続け、6 月11 日にはフェーズ6 を宣言するに至りました。
日本国内においては、5 月15 日に海外渡航経験のない学生から発症という、症例定義に合わない患者が多数発生したことにより保健・教育・医療機関が混乱状況となりました。2009 インフルエンザ(A /H1N1)の臨床像が未知であるため、保健所では、発熱電話相談での対応が1 日1万件以上となり事務職が駆り出され、学校では簡易キットで2 例の陽性者を認めれば学校閉鎖という対応を取る、医療機関では発熱外来から入院措置の受け入れも発生後3 日目の18 日にはパンク状態となるなど、刻々と状況は変化しました。日本中が混乱した状況となったため、時期を調整しながら御協力を頂ける範囲での調査となりました。11 月から実施されたワクチンが想定よりも効を奏し、3 月31 日付けで厚生労働省より沈静化したという文書が発行され、8 月10 日WHO は、警戒水準「6」の次の段階と定義している「最盛期後」と認定し、大流行の終息を宣言しました。発生認定の昨年4 月27 日から感染が確認されたのは214 カ国・地域で、少なくとも1 万8449 人が死亡しました。日本では今年6月末に死者が200 人に達しました。結果的には諸外国に比べて、日本の死亡者数は圧倒的に少なく(人口10 万対死亡率:0.15%)、死亡者と重傷者を減らすとした、わが国の対策の最大の目標は達成されたと評価されています。そして、これは地方自治体の医療機関、保健所(行政機関)、教育機関の関係者が、過剰な負担、プレッシャーのなかで、最大限尽力された成果といえます。
そこで、保健・教育・医療のそれぞれの機関で、今回の対応を経験しどのような教訓を得て、どのような改善点が求められるのか、看護の視点で今後の集団発生に向けた備えについての検証をしましたので、ここにご報告をします。
↓日本災害看護学会 新型インフルエンザプロジェクト報告 平成22年9月7日