JSDNニュース

JSDNニュース No.34

日本災害看護学会 理事長挨拶

理事長 山本 あい子

平成29年に理事・監事の選挙が行われ、8月の定時代議員会で役員の選挙結果ならびに推薦理事の承認を頂きました。日本災害看護学会第7次理事会は(平成29年~平成30年の2年間)、10名の理事と1名の組織会員理事、そして2名の監事の計13名で出発しています。一同、誠実に着実に学会運営に当たりますので、どうぞ引き続き、ご支援とご協力をお願い致します。
日本災害看護学会は、1998年に神戸で設立されました。そして新しい年2018年(平成30年)に20周年を迎えます。この間、本学会は年1回の学術集会を開催し、2018年は第20回年次大会が設立の地で予定されています。また学会誌の発行も行い、現在では年3回の定期的な発行が可能となっています。
国際的な母体を持つ世界災害看護学会の発足に対して中心的な役割を果たし、事務局役割も継続して担っています。2018年10月には、第6回世界災害看護学会がドイツのブレーメンで予定されています。国際的な災害看護ネットワーク構築に加えて、本学会の特徴的な活動である災害発生時の先遣隊の派遣・初動調査・初期調査等のネットワーク活動も、継続して実施しています。
災害が多発する昨今、人材育成が重要課題となっていますが、交流集会や教育セミナーの開催を通して、看護職に対する知識の普及も行っています。さらに災害発生時には募金活動を行い、国内外における被災地での看護活動支援へとつなげています。ホームページや1.17メッセージ等を含む広報活動、災害看護に関連した用語の定義の明確化、そして組織会員活動の活性化等、実に多くの活動を行ってきています。
世界的な動きとして、2005年の国連防災世界会議で採択された「兵庫行動枠組み」が10年を経て、2015年3月に「仙台枠組み」が仙台の国連防災世界会議で採択されました。仙台枠組みでは、人々の生活と健康が重視され、より良い復興に向けた活動が模索されています。日本災害看護学会でも、WHOや国連が主催する仙台枠組みの達成に向けた会議に参加し、看護からの提言を行っているところです。
20歳となった本学会には、従来の活動を継続しつつ、さらに国内外におけるネットワークの強化を図り、エビデンスに基づき、災害時の人々の健康維持/回復に向けた具体的なケアを提言すること、災害に強い看護職を育成することが求められているように思います。今後も引き続き会員の皆様のご支援を頂きながら、災害看護の発展に努めていきたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します。


第19回年次大会を終えて
~ 感 謝 ~

鳥取看護大学 近田 敬子

平成29年8月25日・26日の盛夏、鳥取県倉吉市での年次大会を無事に終えることができました。振り返ると、準備期から多くの皆様のお力添えを戴きながらの取り組みであったと思います。学会に参加いただいた総計1,085名のみなさまに心から感謝を申し上げます。
この度の大会は、学会理事・代議員をはじめとして学会員の皆様に、かなりな無理をお願いしながらの準備と運営だったと思います。すなわち、鳥取看護大学という組織全体で準備して、開催に至ったという珍しい体制で取り組みました。当初、非会員がほとんどで、災害看護に縁遠かった者の集まりから出発し、一時はどうなることかと心配したほどでした。ある意味で、独断的であったかもしれませんが、温かく見守っていただいたと感謝しています。中でも、非会員の実行委員にどのように声かけしながら、会員になってもらうかに、心を砕いた感が残っています。まして、大学事務職員の協力は欠かせない存在でした。
偶然ではありましたが、鳥取県中部地震後の復興・福興の道程中の学会で、地域の幅広い関係機関の応援が得られ、学会を盛り上げることができたと自負しています。特に、住民の方々が災害看護学会に大きな関心を寄せていただき、特徴ある雰囲気が醸し出せたと思います。市民講座・公開講座に参加した住民の方々は、500名を下らなかったようです。大会のメインテーマを「ソーシャル・キャピタルの醸成と災害看護」としましたが、脳裏に描いていたのは、常に被災者である住民向けへのメッセージだと思っておりました。本来は災害看護学の発展に寄与する学術集会にならなければならないのに、‘被災地域のニーヅに合わせて’という言葉に支えられて、震災等を体験し、生活復興とともに歩んでいる地域での年次大会と位置づけました。よって、多くの住民の皆様にも参加してもらいたいと、地域向けの広報活動にも力を入れました。未だ、復興課題は山積していますが、自助・共助の文言が語られるようになっています。空耳でないことを願っています。
重ねて、ほんとうにありがとうございました。


一般社団法人日本災害看護学会
第20回年次大会(開催案内)

一般社団法人日本災害看護学会 第20回年次大会 会長 増野 園惠
(公立大学法人兵庫県立大学 地域ケア開発研究所 所長)

このたび、第20回年次大会を2018年8月10日(金)~11日(土)の2日間、神戸市の神戸国際会議場で開催させていただくこととなりました。今大会のメインテーマは、「災害に立ち向かう看護のリーダーシップを探究する」です。災害のどのフェーズにあっても、人々が集まり「災害への対応」という目標に向かって動く際には、リーダーシップが鍵となります。看護は災害のさまざまな場面で、いろいろな形でリーダーシップを発揮しています。しかし、災害のどのような場面で、どのようなリーダーシップが求められるのか、その中で看護のリーダーシップはどうあればよいのかについては、まだまだ議論が必要です。リーダーシップの形は1つではありません。これまでの経験を踏まえつつ、災害に立ち向かうリーダーシップを再考し、看護は、看護職はどのような場面でどのようなリーダーシップをとるのか、とればよいのか、リーダーシップを発揮するために何が必要かなどを議論し、探究したいと思います。国内外の防災・災害看護の取り組みを過去から未来に向かって考えることができる多彩なプログラムを計画しています。皆様のご参加をお待ちしております。

*開 催 概 要*
大会テーマ:災害に立ち向かう看護のリーダーシップを探究する

開催日:2018年8月10日(金)、11日(土)

会場:神戸国際会議場(〒650-0016神戸市中央区港島中町6-9-1)

演題募集:2018年2月20日(火)~4月17日(火)

募集演題:一般演題(口演・示説)・交流集会・ワークショップ

参加費:会 員(事前10,000円、当日11,000円)
非会員(事前11,000円、当日12,000円)
学生2,000円

参加事前登録期間:2018年4月5日(木)~6月20日(水)

問い合せ先
一般社団法人 日本災害看護学会 第20回年次大会 運営事務局
〒112-0012 東京都文京区大塚3-5-10
住友成泉小石川ビル6F
株式会社サンプラネット
メディカルコンベンション事業部内
E-mail: jsdn20@sunpla-mcv.com
TEL: 03-5940-2614 FAX: 03-3942-6396
ホームページ:http://jsdn20.umin.jp


2017九州北部豪雨災害の亜急性期~急性期における避難所・在宅での公衆衛生活動の報告

久留米大学 三橋 睦子

2017年7月5日午後~6日にかけて、九州北部で線状降水帯が形成され、同じ場所で強い雨が継続し、記録的な豪雨となった。被害の中心は、福岡県朝倉市・朝倉群東峰村、大分県日田市であり、土砂崩れ・河川氾濫が多く発生し道路が寸断された。5日17時51分、福岡管区気象台が、福岡県に九州地方で初めてとなる「大雨特別警報」を発表。19時10分朝倉全域に避難指示が出され、24時間雨量は515.5ミリと観測史上最大を記録した。7月7日13時には福岡県と大分県で73か所の避難所が開設され、2,015名の方が避難する状況となった(出所:内閣府 防災情報のページ)。
久留米市は朝倉市と直線で20㎞以内の近隣に位置する。朝倉保健所(ポートピア)は本看護学科学生の地域生活支援実習(保健師教育課程履修科目)施設となっており、7月9日からの実習開始について確認したところ、受け入れて下さることが分かり、何か力になれることはないか検討しました。
我々は、5年前(2012年)にも九州北部豪雨災害において、被災地の超急性期~急性期における公衆衛生活動を経験し、その必要性を感じています。2016年の熊本地震では避難所でノロウイルスが発生し、避難所における公衆衛生の基盤整備の必要性を痛感しました。まずは、避難所のし尿・廃棄物等の管理によりノロウイルス等の急性胃腸炎等を発生させないこと、粉じん等による肺炎やレジオネラ肺炎、レプトスピラ症、破傷風の防止の支援活動を検討しました。
7日のうちに、朝倉市救援物資受付センターへ、衛生用品のマスク2万枚・速乾式手指消毒剤100本を9日に搬入することを連絡しました。学生の実習開始同日、支援物資を搬入し、保健師に帯同の承諾を得て、日本災害看護学会員である看護教員、感染症専門の看護職者で日程を調整し、5日間避難所の感染対策アセスメント、物資補給、感染対策の実践、指導などの公衆衛生活動を行いました。当時の避難所は11施設で、避難者1,099名。
その後、200件分の感染防止グッズ(マスク,ノロウイルスに可能な消毒シート,プラスチックグローブ,感染防止チラシ・冊子を含む:文科省科研研究成果、写真)を作成し、ボランティア団体による全数在宅ニーズ調査に帯同し、症候群サーベイランスおよびグッズを配布しました。ニーズ調査の中で、「もっと早く来てほしかった」という声が聞かれ、肺炎症例と思われる3例を認めました。
今回の活動を通して、ライフランが停止している避難所での小児や高齢者、障がい者を含む集団生活では、早い段階での感染防止を含む公衆衛生活動が始ってほしいと痛感しました。将来の大規模災害に備え、発災直後から、スムーズに介入すべく、全国的な災害時感染制御チームの制度または災害時公衆衛生活動チームの制度の構築が望まれます。また、災害時の県と市町村レベルでの保健行政、災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)との連携の必要性も感じました。我々の活動を快く受け入れて下さった朝倉市保健福祉センターの保健師の皆様、活動を御支援、御指導頂きました皆様に感謝します。


TNMC&WANS International Nursing Research Conference 2017
-Strategies in Disaster Nursing Managementのセッション-

兵庫県立大学大学院看護学研究科
共同災害看護学専攻5年一貫制博士課程 松尾 香織

2017年10月に、タイのバンコクにおいて、TNMC & WANS International Nursing Research Conference2017が開催されました。グローバルヘルスの課題について、持続可能な開発目標にどのようにコミットメントして看護の役割を果たしていくのかなど活発なディスカッションが展開され、高齢社会や災害対応などの問題に対して日本だけではなくグローバルな視点で取り組んでいくことの必要性を改めて認識し、多くの刺激を受けました。
私がスピーカーとして参加した、Strategies in Disaster Nursing Managementのセッションでは、高知県立大学南裕子先生、中山洋子先生、兵庫県立大学山本あい子先生から、災害看護の構築やその重要性、日本災害看護学会の役割や機能、そして2015年に発生したネパール地震において高知県立大学神原咲子先生がネパール看護協会と取り組んでいるEpiNurse Nepalプロジェクトの紹介がなされました。私は、兵庫県立大学を含む5大学で構成される災害看護グローバルリーダー養成プログラム(Disaster Nursing Global Leader Degree Program:DNGL)で学んでいる学生として、DNGLの紹介と実際の学びについて発表しました。DNGLでの様々な経験を通して、今後は実践と研究をつなぎ、日本の災害の経験から知を積み上げ、災害看護学の発展に貢献していくことが重要であると考えていることを伝えました。また、フロアとのディスカッションでは、日本の災害看護教育の基礎や、災害時の被災された方の文化の違いなど多様性への対応とその教育についての質問があり、意見交換が行われました。DNGLへの意見や質問も頂き、日本だけではなく、世界において災害看護のリーダーの育成や災害対応の課題など災害看護への関心が高いことが分りました。
私は今回で、国際学会への参加は6回目となります。最初は、国際学会に参加するだけで精一杯でしたが、参加を重ねる毎に、他国の方との交流を通して、文化や看護の違いを学ぶことを楽しく感じています。また、参加だけではなく、ポスターでの発表や、今回のようにスピーカーとして発表できる機会をいただき、日本における看護をグローバルに発信していくことの重要性を感じ、今後も取り組んでいきたいと思っています。
災害はあらゆる地域で起こり、複雑化しています。看護界全体として、災害看護のリーダー育成や人間を中心とした災害マネジメント体制を構築することが必要であると感じています。人々が健康に生活できるような社会のために、災害看護の在り方を考えて続けていきたいと思います。


災害看護専門看護師として
-今後の抱負-

福井大学 酒井 彰久

平成29年10月31日に第27回専門看護師認定審査が行われました。被災地や大学院での学びをすべて生かし、このたび災害看護専門看護師の認定を頂くことができました。ご指導くださいました皆様、励ましのお言葉をくださった皆様に厚く御礼を申し上げます。
審査合否の発表以降、たくさんの方から温かいお言葉をいただき、これから災害看護専門看護師として道を歩んでいく使命感と、新たな道を開拓していかなければならないという重責を感じております。思い起こせば第17回年次大会の学会企画にて、私は災害看護専門看護師教育課程での学びや今後の展望について発表をさせていただきました。その際に、今後の展望として「人々が中心であることを忘れず、災害サイクルをふまえて人々の生活を整えることができるように活動していくこと」と述べておりました。あの発表から3年が経過しましたが、その間にも全国各地では様々な災害が発生しました。いくつかの被災地で活動させて頂きましたが、地震や水害という災害の種類は同じにせよ、その様相は一つ一つ異なり、その時々に応じた看護の在り方の難しさを実感してまいりました。しかし、学会で述べた、人々が中心であること、災害サイクルを踏まえて先を見据えた関わりをすることには変わりなく、さらには個人、集団、地域と俯瞰的な視点を持つことの重要性を学んでまいりました。その思いを胸に強く刻み、被災地に足を運び続けるとともに、これから起こりうる災害に備えてまいりたいと思います。そして、たくさんの仲間とともに、人々のいのちと生活に寄り添い災害看護専門看護師として羽ばたいていけるよう、また災害看護の発展に貢献できるよう謙虚に邁進してまいりたいと思います。時に災害看護専門看護師の役割について悩み、悄然としているかもしれません。その際には、ぜひとも叱咤激励のほどよろしくお願い申し上げます。
以上で、抱負を述べてまいりましたが、災害看護について学べば学ぶほど、災害看護とは何か、看護とは何かという問いが生まれております。新たな問いに対してこれからも勉学に励むとともに、引き続き皆様方からのご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。


編 集 後 記

社会貢献・広報委員会 委員長:渡邊智恵

社会貢献・広報委員会が新たなメンバー(東ますみ、松清由美子、寺田英子、石崎ゆかり、立垣祐子、藤井知美)を得て、歩み始めました。会員の皆様に本学会の動向とともに最新の災害看護・災害医療に関するニュースを引き続きお届けしたいと思います。今回は、役員選挙後であり「理事長の挨拶」「第19回年次大会の報告」「第20回年次大会の案内」とともに、「九州北部豪雨災害時における看護活動」「WANSでの災害看護」「災害看護専門看護師の抱負」を掲載させていただきました。
災害看護専門看護師の誕生は、災害看護に関する新たな芽の誕生であり、その芽が大きく育ち、組織を活性化させ災害看護教育の発展につながり、災害からの健康や生活への被害を少しでも少なくすることに貢献していくことができることを願っております。










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会員数:2024年6月30日現在

名誉会員10名
(うち物故会員4名)
個人会員 1325名
学生会員 10名
組織会員 33名
賛助会員 3組織

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